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映画を観るときに、
何も知らずに観た初めての鑑賞と、
結末を知った後にじっくり味わいながら観る二度目の鑑賞で、
感じ方が違っていた経験はありませんか?
初めての鑑賞では、全体のストーリーに引き込まれ、映画全体の雰囲気を感じ取ります。
二度目の鑑賞では、知らずに観ていたときには気づかなかった登場人物の表情まで目に入ってきます。
このように、知らずに観るときと知って観るときでは、それぞれに魅力があります。
知らずに観ても十分に楽しめますが、
知ることでより深く理解できることが多いのです。
美術展も同じようなものです。
何も知らずに見ても十分に感じ取れますが、
知って見ることで、より深い物語や新たな発見に出会うこともあります。
しかし、美術展を鑑賞するために忙しい日々の中で勉強の時間を捻出するのは簡単ではありません。
そんな皆さまと美術作品をつなぐ架け橋こそ、「ドーセント」です。
展覧会の鑑賞時間の間、作品や観客と歩調を合わせて歩む、
ドーセントの物語と心地よい足取りについて、
ルムトンアンバサダーでありドーセントのキム・ジェヒさんと共にお届けします。
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”作品と観客に集中するためには、心地よさが大切です。”
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Q. はじめまして。簡単に自己紹介をお願いします!
こんにちは、ドーセントのキム・ジェヒです。
お会いできて嬉しいです。
Q. キム・ジェヒさんは、どのようにして美術に興味を持ち、
ドーセントという職業を選ばれたのですか?
私は趣味がそのまま仕事になったケースです。
振り返ってみると、父が彫刻家だったため、幼い頃から美術作品に触れる環境で育ちました。
ですが、結婚後は子育てに専念する時期があり、
自然と育児に力を注いでいました。
そんなある日、ホアムギャラリーで開催されていた「アメリカ現代写真展(2002年10月22日〜2003年2月2日)」を観覧した際に、ドーセントについての説明を聞き、専門の文化ボランティアであることを知りました。
私も芸術家の人生や作品について語る仕事をしたいと思い、ドーセントへの応募を検討し、いろいろ調べました。
すると当時、国立現代美術館で開催されていた
「故パク・ナムジュン(1932〜2006)没後1周年追悼特別展『ブッパタールの思い出』(2007年3月23日〜5月6日)」の展示でドーセントを募集しているのを知り、英語ドーセントとして応募しました。
作家紹介の英語原稿を作成し、面接に合格してドーセントとして活動を始めました。
こうして国立現代美術館でのドーセントボランティアからスタートし、以降も様々な場面でドーセントとして活動を続けています。
Q. 積極的な努力で新しいチャンスを掴まれたと思いますが、
実際にドーセントを始めてみて、苦労されたことや大変だったことはありましたか?
もちろん、大変な時もありますが、
ストレスを感じるというよりは、「ワクワクする緊張感」と言いたいです。
展示解説を始める瞬間は、いつも胸が高鳴ります。
観客と作品をつなげ、観客と心を通わせたときの喜びは本当に大きいです。
また、年齢に関係なく、絶えず新しいことを
学べる機会を得られたことにも感謝しています。
Q. 良い解説をするために、
普段から心がけていることはありますか
まず一つ目は、「展示」に対する十分な「理解」です。
作品はもちろん、展示を企画した学芸員の意図まで考慮し、
その意図が歪められないように努めています。
二つ目は、「観客とのコミュニケーション」です。
美術や芸術が私たちの生活から遠く感じられる理由の一つに、
難しい専門用語があると思います。
そのため、解説の際に使う用語も日常会話で使う言葉に置き換え、
親しみやすく伝えることを心がけています。
また、知識が豊富だからといって観客より先回りして話を進めるのではなく、
理解を深めてもらうために解説の前後で質問を受けたり、
短い対話を交えたりしながら、一緒に展示について考える時間をつくるようにしています。
さらに、観客の方が「楽しい」と感じてくださることが、良い解説の条件だと考えています。
多くの方が、作品の背景にある隠れたビハインドストーリーに興味を示されるので、
作品以外の背景もあらかじめ勉強しておくことがあります。
例えば、「インド現代美術-第三の目を開け」という展示で、
バールティ・ケール(Bhart Kher)の「Skin Speaks Its Own Language」(2006年)
という象の彫刻作品がありました。
非常に巨大だったため、美術館の中央ホールに入らなかったのですが、
展示のために壁を壊して搬入し、その後また壁を元に戻したという話があります。
このように、作品そのものとは直接関係のない話であっても、
展示の裏話として、企画の趣旨を損なわない範囲であれば、
解説に少し添えて興味を引くようにしています。
”解説をするときは、疲れないように、まずは履き心地のいい靴を選ぶようにしています。”
Q. 展示の解説をする際は、作品だけでなく観客にも意識を向けなければならないので、快適さはより一層大切だと感じます。
もちろんです。自分が不快だと、まず自分自身が疲れてしまいますし、
立っているのがつらいからといって、姿勢を崩すわけにもいきません。
ですので、解説のときは「足に優しい靴」を最優先にしています。
特に私は足が大きく、幅も広いタイプなんです。
それに、以前足の手術を受けたこともあるので、「足幅が広めの靴かどうか」は必ずチェックするようにしています。
ルムトンのシューズは、甲を覆うウール素材のおかげで締め付け感がなく、とても快適でした。
また、靴底のクッションも適度な硬さで、履き心地がちょうどよかったです。
硬すぎる靴も疲れてしまいますし、逆に柔らかすぎても
かえって不安定で疲れるのですが、ルムトンはちょうどいいバランスのクッション性でした。
長時間履いていても足が痛くなることも、足に意識が向くことも一切なかったので、
解説にしっかり集中することができました。
Q. ルムトンの心地よさをよく感じていただけたようで嬉しいです!
現在クラシックブラックのシューズに、既存のホワイトの靴紐ではなく
あえてブラックの靴紐を選ばれた理由を教えていただけますか?
展示解説の際は、色使いにも気を配っており、基本的にはブラックを好んで選びます。
ブラックはすべての光を吸収し、
あらゆる色を内包している色だと捉えています。
美術館では予期せぬ色と出会うこともありますが、
ブラックはそうした多様な色合いとも調和しやすいと感じています。
もちろん、展示のテーマに合わせてさまざまな色の靴を履くこともありますが、
それは稀なケースです。
今回履いているルムトンのクラシックも、
スラックスと合わせてセミフォーマルな雰囲気にしてみたところ、
靴紐をブラックに替えるとさらに統一感が出るのではと思い、試してみました。
その結果、より洗練されたベーシックなデザインが引き立ち、とても気に入っています。
Q. ルムトンを一言で表現すると?
【自由な歩み】と表現したいです。
まるで足が心地よく呼吸しているかのような感覚です。
仕事でも日常でも、歩みが自由でなければ、
自分が進みたい方向へ正しく進むことはできません。
単に『快適な靴』というだけでなく、足を窮屈に締め付けることなく、
自由な歩みをもたらしてくれる靴だとお答えしたいです。
Q. これからの活動計画について教えてください。
現在、弘大(ホンデ)にある生涯学習館で美術人文学の講義を行っています。
また、新しい本もまもなく出版されます。
タイトルは『収集から共有へ』(仮題)で、
キム・ダルジン美術資料博物館の館長をテーマにしています。
館長のキムさんも趣味で美術資料を収集することから仕事に転じた方です。
この本のほかに、YouTubeやInstagramの「アートジェヒ」チャンネルを通じて、
より多くの方々と交流していきたいと考えています。
Q. ドーセントのキム・ジェヒさんが目指している目標は何ですか?
人は誰しも、自分の声を発したいという思いを持っていると考えています。
その声を発し、何かを成し遂げたときに、「自己効力感」を感じるものです。
たとえ言葉にしなくても、それぞれが独自の方法で自分の声を表現していると思います。
そして、その声を最もよく表現しているのが芸術家たちだと考えています。
だからこそ、人々や芸術家について語り合うことを楽しんでいます。
私は展示解説や美術の講義を行うときに、強い自己効力感を感じます。
そして、私の解説や講義を聴いてくださるすべての方が、
芸術家を通じてポジティブな自己効力感を得る方法を知る手助けができれば幸いです。